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【2026年10月施行】医療機関のカスハラ対策が義務化!クリニック・歯科医院が患者対応で今すぐ準備すべきこと

2026/06/21

【2026年10月施行】医療機関のカスハラ対策が義務化!クリニック・歯科医院が患者対応で今すぐ準備すべきこと

「先生、また3番の患者さんが受付で怒鳴ってて…」。診察室にスタッフが青い顔で駆け込んでくる。診察室では先生に何も言わなかったのに、受付に来たとたん人が変わったように受付スタッフを責め立てる——。理由はさまざまですが、矢面に立たされた受付スタッフや看護師は、その日ずっと表情が沈んだまま。こんな場面、貴院でも一度はありませんでしたか。

「どう対応するのが正解なんだろう」と、その場で言葉に詰まってしまった院長先生も多いと思います。毅然と対応すればトラブルが大きくなりそうだし、受け流せばスタッフが傷つく。かといってスタッフから「あの患者さんの対応はもうしたくない」と言われると、それはそれで困ってしまいますよね。この”どうしたらいいか分からない”を整理してくれるのが、2026年10月から始まるカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化です。

このコラムでわかること

  • 2026年10月から何が義務になるのか(施行日・対象・カスハラの定義)
  • 医療機関のカスハラ=「ペイハラ」が、なぜ特に対応しづらいのか
  • 放置するとどんなリスクがあるのか(安全配慮義務・労災)
  • 厚労省の指針が事業主に求める具体的な4つの措置
  • 現場でのNG対応・OK対応の違いと、今から始められる準備

📌 結論を先に

2026年(令和8年)10月1日から、スタッフが1人でもいる医療機関を含むすべての事業主に、患者・利用者からのカスハラ防止措置が義務づけられます。やるべきことは「方針を決めて周知する」「相談できる窓口をつくる」「起きたときの対応手順を整える」の3本柱で、難しい制度ではありません。むしろ、スタッフの離職を防ぐ”守りの一手”として、施行前の今が準備のチャンスです。

そもそもカスハラ義務化って、何が変わるの?【2026年10月1日施行】

結論から言うと、これまで「努力すべき」だったカスハラ対策が、事業主の法律上の義務に格上げされます。根拠は改正された労働施策総合推進法で、2025年(令和7年)6月11日に公布され、カスハラ対策に関する部分は2026年(令和8年)10月1日に施行されます。

対象は「事業主」とされているため、スタッフを1人でも雇っていれば、規模を問わず対象です。歯科医院、クリニック、薬局、どこも例外ではありません。さらに同じ日から、就職活動中の学生などへの「求職者等セクハラ」防止措置も義務化されるため、採用面接を行う医療機関は併せて押さえておきたいところです。

「カスハラ」と「正当なクレーム」はどう違う?

ここがいちばん気になるところですよね。2026年2月26日に公布された厚労省の指針(告示)では、カスハラを次の3つをすべて満たす言動と整理しています。

  • ① 顧客等(=患者やその家族など)の言動であって
  • ② 業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えたもので
  • ③ それによってスタッフの就業環境が害されるもの

たとえば「待ち時間が長い、どうにかしてほしい」はサービスへの改善要求=正当なクレームの範囲です。一方、「ちんたらするな」と怒鳴り続ける、順番を飛ばして自分を先に診ろと迫る、土下座やSNS拡散をちらつかせる——こうなると②③を満たし、カスハラに該当しうる、という線引きになります。

医療機関のカスハラ=「ペイハラ」。なぜ貴院は特に危ないのか?

医療現場でのカスハラは、患者やその家族からのものが多く、「ペイシェントハラスメント(ペイハラ)」とも呼ばれます。患者さんは体調への不安を抱えて来院するため感情的になりやすく、しかも”その場で即対応”を迫られるのが、一般のサービス業と決定的に違う点です。

正直に申し上げると、医療機関は他業種より対応が難しい職場です。受付スタッフが暴言を浴びても、その場で診療を止めるわけにはいきません。診察中に家族から威圧されても、目の前の処置は続けなければならない。逃げ場のないまま現場のスタッフが消耗していく構造になっています。

💡 職種ごとに、受けやすいカスハラは違います

受付・医療事務は、予約や順番のルールへの執拗な文句、長時間の居座り、「必要のない検査を受けさせられた、お金を返せ」といった不当な返金要求を、看護師・歯科衛生士は治療や処置への執拗なクレーム、暴言、根拠のない謝罪要求を、薬剤師は「順番を飛ばして先に薬を出せ」といった過剰要求を受けやすい傾向があります。誰がどんな場面で矢面に立ちやすいかを把握しておくと、対策の優先順位が見えてきます。

「どう対応すればいいの?」——院長先生がいちばん困るところ

正直に申し上げると、カスハラ対応でいちばん難しいのは「その場でどう振る舞うのが正解か分からない」という点ですよね。毅然と対応すればトラブルが大きくなりそうだし、受け流せばスタッフが傷つく。判断を現場のスタッフ任せにしてしまっている医療機関は、決して少なくありません。

医療労務のご相談でも、「スタッフから『あの患者さんの対応はもうしたくない』と言われて困っている」という声をよく伺います。これは院長先生を責める話ではありません。対応のルールが決まっていないと、現場のスタッフも経営側も板挟みになってしまう、という構造的な問題なんです。だからこそ、院としての方針をあらかじめ決めておくことに意味があります。

⚠️ 放置すると、貴院が「安全配慮義務」「労災」のリスクを負います

使用者である医療機関は、スタッフが安全に働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)を負っています。カスハラへの組織的な対応を怠った結果、スタッフがメンタル不調に陥れば、医療機関が損害賠償責任を問われる可能性があります。実際、入院患者の暴力で看護師が負傷・適応障害を発症した事案で、病院の安全配慮義務違反が認められた裁判例(日本鋼管病院事件・東京地判平成25年2月19日)もあります。さらに、心理的負荷による精神障害の労災認定基準には、カスタマーハラスメントに関する出来事も位置づけられており、カスハラが原因の不調が労災と判断される可能性もあります。対応を現場任せにして放置することは、貴院自身のリスクにもなるのです。

貴院がやるべきことは?指針が求める4つの措置

やることはシンプルです。厚労省の指針は、おおむね次の4点を事業主に求めています。完璧を目指すより、できるところから着手するのがコツです。

  • 方針を明確にして周知する:「カスハラは認めない・スタッフを守る」という院の姿勢を、院内ルールやホームページで対患者・対職員に示す
  • 相談体制を整える:スタッフがカスハラを相談できる窓口(小規模なら院長、または顧問の専門家)を決め、周知する
  • 起きたときに迅速・適切に対応する:事実確認、被害を受けたスタッフのケア、再発防止までの手順を決めておく
  • 相談者を守る:相談したスタッフのプライバシーを守り、相談を理由に不利益な扱いをしない旨を周知する

あわせて指針では、特に悪質なカスハラへの対処方針をあらかじめ定めておくことも求められています。「ここまで来たら警察・弁護士に連携する」というラインを先に決めておくと、現場のスタッフが迷わず動けます。

就業規則にも「カスハラ」を盛り込む——”守る側”と”しない側”の両面で

方針を明確にするうえで効果的なのが、院内ルール(就業規則・服務規律)にカスハラへの考え方を盛り込んでおくことです。「スタッフをカスハラから守る」という姿勢を明文化しておけば、いざというときの対応の根拠になります。

そして、意外と見落とされがちなのが”自院が加害者側になる”ケースです。医療機器の業者さん、薬の卸、清掃や保守の業者さんなど、貴院にとっての取引先に対して、自院のスタッフが理不尽な要求や高圧的な言動をしてしまえば、今度は貴院がカスハラをする側になります。就業規則のなかで「カスハラに当たる行為は懲戒の対象になりうる」と位置づけておけば、”受ける側”と”しない側”の両面に備えられます。どんな条文にするかは自院の実情によって変わるので、ここは専門家と一緒に整えるのが安心です。

💡 ルールづくりとセットで「研修」を

方針や就業規則を整えても、現場のスタッフが「どこからがカスハラか」「受けたらどう動くか」を共有できていなければ、絵に描いた餅になってしまいます。スタッフ全員でロールプレイなどを通じて対応の型を身につける研修を行うと、方針が一気に”現場で機能するもの”に変わります。

いきなりは対応できない。だから”事前準備”がものを言う

正直に申し上げると、カスハラはある日突然、目の前で起こります。その場でうまくさばくのはプロでも難しいもので、何の準備もないまま現場に任せれば、スタッフが消耗するのは当然です。だからこそ、起きてから慌てないための”備え”を、平時のうちに用意しておくことが効いてきます。

  • 報告書の様式:いつ・誰が・どんな言動を受けたかを記録できるフォーマットを用意しておく。事実確認や再発防止、後の判断材料の土台になります
  • 警告文のひな形:悪質なケースに備えて、注意・警告を伝える文書をあらかじめ準備しておく。実際に出すかどうかの判断は、個別事情によるので専門家と相談しながら進めると安心です
  • 緊急時の連絡フロー:警備会社や警察への連絡方法・連絡先を、誰でもすぐ見える場所に明記しておく。とっさのときに「どこに連絡するか」で迷わせない
  • 対応マニュアル+研修:「こう言われたら、こう動く」を型として整理し、研修で実際に声に出して練習しておく。読むだけのマニュアルより、一度やってみたほうが現場で動けます

どれも、いざ起きてから作るのでは間に合いません。施行までの今のうちに、ひとつずつ形にしておくのがいちばんの安心材料です。

  • NG:事実確認の前から全面的に謝ってしまう → 「院が非を認めた」と誤解され、要求がエスカレートする
  • OK:「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません」と、不快にさせた点に絞って謝罪する → 責任を認めずに感情をクールダウンできる
  • NG:対応を一人のスタッフに丸投げし、院長は奥で診療を続ける → スタッフは「守ってもらえない」と感じ、士気が下がる
  • OK:複数名で対応し、記録(カルテ・日誌・録音等)を残す → 院全体で守る姿勢が伝わり、後の判断材料にもなる

こんな医療機関は要注意

  • 2026年10月から対応が義務になること自体を、まだ知らない
  • カスハラ対応のルールがなく、その場のスタッフの判断任せになっている
  • 院長がすべて抱え込み、スタッフが相談できる窓口が事実上ない
  • 正当なクレームとカスハラの線引きを、誰も説明できない
  • 過去にカスハラが原因で辞めたスタッフがいるのに、対策が打たれていない

カスハラ対策は”守り”であり、人材定着のチャンス

人手不足が深刻な医療機関にとって、スタッフ1人の離職は、患者さん1人の売上よりはるかに大きな痛手です。採用にも教育にもコストがかかりますから、「スタッフを守る院」であることは、そのまま定着率の向上につながります。

カスハラ対策は、患者さんを”拒否する”ための後ろ向きな話ではありません。安心して働ける職場をつくり、結果として患者さんへの医療の質も守る——そう捉えると、2026年10月の施行は、貴院の体制を見直すいい機会になるはずです。今から準備を始めてみてはいかがでしょうか。

まとめ

項目 ポイント
施行日 2026年(令和8年)10月1日
対象 スタッフを雇うすべての事業主(医療機関も規模を問わず対象)
カスハラの定義 ①患者等の言動 ②社会通念上許容される範囲を超える ③就業環境が害される(3要素すべて該当)
やるべきこと 方針の明確化・周知/相談窓口の整備/事後対応の手順化/相談者の保護(就業規則への明記・スタッフ研修も有効)
医療特有の注意 患者の不安から感情的なトラブルが起きやすく、その場での即対応を迫られる。放置すると安全配慮義務違反・労災のリスクも

よくある質問(FAQ)

Q. スタッフが数人の小さなクリニックでも対象ですか?

はい。義務の対象は「事業主」で、規模の下限はありません。スタッフが1人でもいれば対象になります。小規模だからこそ、院長先生が一人で抱えない仕組みづくりが大切です。

Q. 10月1日までに、最低限なにを準備すればいいですか?

まずは「カスハラからスタッフを守る」という方針を決めて院内に周知すること、そして相談先を一つ決めて知らせることです。この2つだけでも、現場の安心感は大きく変わります。

Q. カスハラを受けたスタッフには、どんなケアが必要ですか?

まずは一人で抱え込ませず、事実を聞き取って「報告してくれてありがとう」と受け止めることが第一です。必要に応じて勤務調整や休養、専門の相談先につなぐなど、心身のケアまで含めて対応すると、スタッフの安心感と信頼につながります。

Q. 正当なクレームまで拒否してしまわないか心配です。

そこは大切な視点です。サービス改善を求める正当なクレームと、社会通念を超えた言動(カスハラ)は分けて考えます。両者の線引きをスタッフ間で共有しておくことが、過剰反応もカスハラ放置も防ぐ鍵になります。

ご相談はお気軽に

「うちの規模で何から始めればいいか分からない」「就業規則や対応マニュアルを整えたい」「スタッフ向けのカスハラ研修をやってみたい」——そんなお悩みがあれば、ぜひTOMOE社会保険労務士事務所にご相談ください。

📌 カスハラ研修・体制づくりをサポートします

当事務所では、カスハラ研修メニューをご用意しています。栃木県小山市を拠点に、歯科医院・クリニック・薬局など医療機関の労務課題に数多く対応してきた実績をもとに、貴院の実情に合わせて、方針づくりや就業規則の整備、相談体制・対応マニュアルづくり、スタッフ研修まで丁寧に伴走させていただきます。施行前の今だからこそ、余裕をもって準備を進めるのがいちばんの安心材料です。


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参考資料・出典

※本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。最新の情報は厚生労働省ホームページをご確認ください。