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【令和8年度】最低賃金の目安は全国平均1,176円に!中小企業が9月までに確認すべき5つのこと

2026/08/03

【令和8年度】最低賃金の目安は全国平均1,176円に!中小企業が9月までに確認すべき5つのこと

「今年もまた上がるのか…で、結局いくらになるんだ?」

7月末のニュースを見て、そう思われた経営者・人事ご担当の方は多いのではないでしょうか。「うちのパートさん、10月から時給いくらにすればいいんだろう」「そもそも月給のスタッフは関係ないよね?」——このあたり、いちばん気になるところですよね。

令和8年7月28日、中央最低賃金審議会から今年度の引上げ額の目安が示されました。この記事では、示された数字の意味と、9月までに事業所として確認しておきたいポイントを整理してお伝えします。

このコラムで扱う内容

  • 令和8年度の最低賃金の目安はいくらか(ランク別)
  • 「目安どおりに決まる」とは限らない理由
  • 月給のスタッフも最低賃金の対象になること
  • 最低賃金に算入できる手当・できない手当
  • 10月からの社会保険適用拡大とのダブルインパクト
  • 使える助成金・支援策と、賃金規程の見直しポイント

📌 結論を先に

令和8年度の引上げ額の目安は、Aランク54円・Bランク56円・Cランク56円。目安どおりなら全国加重平均は1,176円になります。

ただし、これはあくまで「目安」です。実際の金額は8月下旬〜9月にかけて各都道府県で決まります。金額の確定を待つ間にやっておくべきことは、月給スタッフを含めた全員分の時給換算チェックです。

令和8年度の最低賃金の目安はいくら?

令和8年7月28日に開催された第75回中央最低賃金審議会で、地域別最低賃金額改定の目安が答申されました。ランクごとの引上げ額の目安は、Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円です。

仮に全都道府県が目安どおりに改定した場合、全国加重平均は1,176円になります。上昇額は55円、引上げ率にすると4.9%です。前年度(上昇額66円・引上げ率6.3%)と比べると、伸びはやや落ち着いた形になりました。

ランクごとの目安額と対象地域

ランク 引上げ額の目安 対象
Aランク 54円 埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪の6都府県
Bランク 56円 28道府県
Cランク 56円 13県

💡 今年の特徴は「地方のほうが上げ幅が大きい」こと

大都市圏のAランクが54円、それ以外のB・Cランクが56円と、地方のほうが引上げ額が大きく設定されています。地域間の格差を縮めていく方向がはっきり出た答申といえます。地方で事業を営む使用者にとっては、負担感の大きい年になりそうです。

「目安どおりに決まる」とは限らないって本当?

本当です。中央で示されるのはあくまで参考値で、実際の金額は各都道府県の地方最低賃金審議会が審議し、都道府県労働局長が決定します。

実際、前年度(令和7年度)は39の道府県で目安を上回る金額が決定されました。「うちはBランクだから56円上がるんだな」と決め打ちして予算を組むと、あとで足が出る可能性があります。

発効日は都道府県によってバラバラです

もうひとつ見落とされやすいのが、発効日(実際に新しい金額が適用され始める日)です。改定後の最低賃金は令和8年10月頃から順次適用されますが、都道府県によって発効日には差があります。

前年度は、10月に発効した地域もあれば、年をまたいで翌年3月に発効した地域もありました。「10月1日から全国一斉」ではないという点は、必ず押さえておいてください。

⚠️ 実際のご相談でよくあるのがこのパターン

「ニュースで見たので10月から時給を上げました」——けれど自社の所在地の発効日は12月だった、というケース。早く上げること自体は問題ありませんが、複数の事業所を持っていて所在地が違う場合は要注意です。事業所ごとに適用される金額も発効日も変わります。本社の基準でまとめて処理してしまうと、支店側で最低賃金割れが起きることがあります。

月給のスタッフは最低賃金と関係ない?

いいえ、月給のスタッフも最低賃金の対象です。ここが最大の落とし穴で、実務のご相談でもいちばん漏れが多いところです。

最低賃金は「時間額」で定められているため、月給制の場合は時給に換算して比較します。パート・アルバイトの時給だけを見直して、月給の正社員を確認していない事業所は非常に多いのが実情です。

時給換算の計算式

時給換算額 = 最低賃金に算入される賃金 ÷ 1か月平均所定労働時間

1か月平均所定労働時間 = (365日 − 年間休日日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月

週40時間・1日8時間の事業所であれば、1か月平均所定労働時間はおおむね173.8時間になります。この数字を分母に使って計算します。

具体例でみてみましょう

賃金項目 金額 最低賃金への算入
基本給 175,000円 算入する
役職手当 10,000円 算入する
通勤手当 8,000円 算入しない
精皆勤手当 5,000円 算入しない
支給額の合計 198,000円 算入対象は185,000円

この場合、185,000円 ÷ 173.8時間 = 約1,064円が時給換算額になります。給与明細上は「月給19万8千円」でも、最低賃金の判定に使えるのは1,064円という数字です。

お住まいの地域の最低賃金が1,100円を超えれば、この月給は最低賃金を下回ることになります。「20万円近く払っているのに違反?」と驚かれることも多いのですが、こういう計算になっているのです。

最低賃金に算入できない賃金とは?

最低賃金の判定に使えるのは、毎月きまって支払われる基本的な賃金だけです。最低賃金法により、次のものは算入しないと定められています。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金)
  • 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金)
  • 深夜割増賃金
  • 精皆勤手当・通勤手当・家族手当

💡 逆に「算入できる」手当もあります

除外されるのは上記に限られます。役職手当・資格手当・調整手当など、毎月定額で支払われる手当は算入できます。「手当はぜんぶダメ」と思い込んで必要以上に基本給を上げてしまうケースもあるので、自社の賃金項目をひとつずつ仕分けしてみてください。

今年は「最低賃金だけ」の話ではありません

今年の10月は、社会保険の適用拡大も同じタイミングで動きます。人件費への影響は、最低賃金の引上げ分だけでは終わりません。

これまで社会保険の加入対象を判断する際にあった賃金の要件(いわゆる「106万円の壁」)が見直され、短時間で働くスタッフの加入対象が広がります。時給が上がることで、これまで対象外だった方が新たに加入対象に入ってくる、という連動も起こります。

⚠️ ダブルで効いてくるコスト増

時給アップによる人件費増と、社会保険料(法定福利費)の事業主負担増が同時に発生します。人件費の試算をするときは、必ず社会保険料の事業主負担分まで含めて計算してください。時給の上昇分だけで見積もると、実際の負担額を大きく見誤ります。

今から9月までに何をすればいい?

金額が確定するのを待つ必要はありません。むしろ、確定してから動き出すと10月に間に合わなくなります。目安が出た今の時点でできることを先に片づけておきましょう。

✅ 今すぐやっておきたい4つのステップ

  • STEP1:全スタッフの時給換算リストを作る
    パート・アルバイトだけでなく、月給者・日給者も含めて全員分。事業所が複数あるなら事業所ごとに。
  • STEP2:手当を「算入できる/できない」で仕分ける
    賃金台帳の項目を上から順に仕分けしていきます。ここで初めて実態が見えてきます。
  • STEP3:目安どおり上がった場合の人件費を試算する
    社会保険料の事業主負担分も含めて。年間ベースでいくら増えるかを把握します。
  • STEP4:賃金テーブル全体への影響を確認する
    いちばん低い人だけ上げると、上の階層との差が消えます(後述)。

賃金テーブルの「圧縮」に気をつけてください

正直に申し上げると、最低賃金対応で本当に難しいのは、法令をクリアすることそのものではありません。上げたあとに起きる、社内のバランス崩れのほうです。

最低賃金に合わせて新人の時給を上げると、3年働いているスタッフとの差がほとんどなくなります。実際のご相談でも「新しく入った人と自分の時給が同じなんですが」とベテランから声が上がり、退職につながってしまった、という話は珍しくありません。

求人票の時給を上げるときも同じです。募集時給だけ先に引き上げて、既存スタッフの時給を据え置くと、逆転現象が起きます。求人を出す前に、社内の賃金バランスをセットで見直しておくのが安心です。

NG対応とOK対応

❌ NG対応 ✅ OK対応
パートの時給だけ確認して終わり 月給者も時給換算して全員チェックする
本社の所在地の金額を全事業所に適用 事業所ごとに金額と発効日を確認する
通勤手当を含めて「最低賃金は超えている」と判断 算入できる賃金だけで計算する
最低賃金に合わせるため精皆勤手当を新設する 算入対象になる基本給・定額手当で調整する
いちばん低い人だけ引き上げて終わり 賃金テーブル全体のバランスを見直す

こんな事業所は要注意

  • 複数の都道府県に事業所がある
  • ここ数年、賃金規程を見直していない
  • 基本給が低く、手当で月給額を積み上げている
  • 年間休日が多く、1日の所定労働時間が短い(分母が小さくなる分、時給換算額は上がりますが、逆のケースでは要注意です)
  • 派遣スタッフを受け入れている(派遣スタッフには派遣先の地域の最低賃金が適用されます)
  • 「うちは全員月給だから関係ない」と思っている

💡 医療機関・介護施設の方はこちらもあわせてどうぞ

クリニック・歯科医院・薬局には、週44時間の特例による最低賃金割れなど、他業種にはない固有の落とし穴があります。詳しくはこちらのコラムで解説しています。

⚠️ 最低賃金を下回るとどうなる?

地域別最低賃金を下回る賃金しか支払っていない場合、最低賃金法により50万円以下の罰金が科されることがあります。また、最低賃金額に満たない部分の労働契約は無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。つまり、差額の支払い義務が発生します。過去にさかのぼって請求されるリスクもあるため、早めの確認が何よりの安心材料です。

負担を軽くするために使える支援策は?

引上げの負担を自社だけで抱え込む必要はありません。今回の答申でも、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げできる環境整備の必要性が労使共通の認識として示され、生産性向上支援や価格転嫁対策の強化が求められています。

📊 検討したい主な支援策

業務改善助成金/事業場内でいちばん低い時間給を一定額以上引き上げ、設備投資などで生産性向上に取り組んだ場合に、その費用の一部が助成されます。最低賃金の影響を強く受ける事業者向けの制度です。

キャリアアップ助成金/有期契約労働者の正社員化や、賃金規定等の改定による処遇改善を支援する制度です。

価格転嫁の取組/令和8年1月から施行された取引適正化に関する法改正(取適法・振興法)の執行強化が進んでいます。労務費の上昇分を取引価格に反映させる交渉は、以前より進めやすい環境になりつつあります。

助成金は要件や金額が年度ごとに変わりますので、活用を検討される場合は最新の公募要領をご確認ください。申請のタイミングによっては、引上げを実施するに手続きが必要なものもあります。

見方を変えれば、賃金制度を整えるチャンスです

最低賃金の引上げは、たしかにコスト面では頭の痛い話です。ただ、毎年これだけの上げ幅が続く以上、「今年をどうしのぐか」で対応していると、来年も再来年も同じことを繰り返すことになります。

政府は2030年代半ばまでに全国加重平均1,500円という目標を掲げています。であれば、その前提で耐えられる賃金の仕組みをつくっておくほうが、結果的にラクになるはずです。

経験年数や役割に応じた賃金テーブルが整っていれば、毎年の改定は「表の数字を入れ替えるだけ」の作業になります。それに、賃金の根拠がはっきりしている職場は、スタッフからの納得も得やすく、定着率にも効いてきます。今回の改定を、賃金制度そのものを見直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q. 目安が出た時点で、もう時給を上げてもいいですか?

A. 問題ありません。最低賃金は「下限」を定めるものなので、それを上回る額を先行して支払うことは自由です。ただし、いったん上げた賃金を後から下げるのは労働条件の不利益変更になり、原則として個別の同意が必要です。確定額を見てから決めたい場合は、9月の発表を待つほうが安全です。

Q. 自社の最低賃金の金額と発効日はどこで確認できますか?

A. 厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」ページで確認できます。改定額は8月下旬〜9月にかけて各都道府県労働局から順次公表されますので、その時期に自社の所在地の欄をご確認ください。

Q. 派遣スタッフの最低賃金はどちらの地域が適用されますか?

A. 派遣先の事業場の所在地の最低賃金が適用されます。派遣元がどこにあるかは関係ありません。県境をまたいで派遣を受け入れている場合は、特にご注意ください。

Q. 特定最低賃金というものがあると聞きました。地域別とどう違いますか?

A. 特定最低賃金は、特定の産業について地域別最低賃金より高い水準で定められるものです。該当する産業の事業所では、地域別と特定の両方が適用され、高いほうの金額を支払う必要があります。自社が対象産業かどうかは、都道府県労働局にご確認ください。

Q. 賃金規程を変えないといけませんか?

A. 賃金規程に具体的な金額や賃金テーブルを記載している場合は、改定が必要になります。あわせて、就業規則の変更届出や、スタッフへの周知も必要です。この機会に、手当の設計そのものを点検されることをおすすめします。

まとめ

項目 内容
答申の日 令和8年7月28日(第75回中央最低賃金審議会)
引上げ額の目安 Aランク54円/Bランク56円/Cランク56円
目安どおりの場合の全国加重平均 1,176円(上昇額55円・引上げ率4.9%)
実際の金額が決まる時期 8月下旬〜9月(都道府県ごとに決定)
発効時期 令和8年10月頃から順次(都道府県により差がある)
今すぐやること 月給者も含めた全スタッフの時給換算チェック
同時に確認すること 10月からの社会保険適用拡大による法定福利費の増加

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金額が確定してから動き出すと、10月の給与計算に間に合わないこともあります。目安が出た今のうちに準備を始めておくのが、いちばんの安心材料です。


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参考資料・出典

※本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。令和8年度の地域別最低賃金額は各都道府県の地方最低賃金審議会の答申を経て決定されるため、記載の目安額と実際の決定額は異なる場合があります。最新の情報は厚生労働省ホームページをご確認ください。